貴族文化の色濃く残る欧米では、「古い住宅の方が価値が高い=ステイタス」と考えられ、また住宅を消費財ではなく自分たちが生活する地域の文化財と考えているために手入れを欠かさない人が多いようです。
また、大陸国が多く、日本と比較して自然災害による家屋被災が少ない等の気象的条件も関係有るのかもしれませんね。
しかし住宅の寿命に「39年(日) vs 141年(英)」と、4倍ほども開きがあるのは、文化的見地だけでは説明として不十分な気もします。
なぜ現代日本の建築物、特に木造住宅はこれほどまでに短命なのでしょうか?
それは戦後の「質より量の確保」を主眼とした住宅政策が最大の理由かもしれません。住宅を利益を生み出す「商品」とだけみなしてきた一部の企業による過度の利益追求、そして伝統技術の継承者である大工の減少による施工の質の低下等、理由はいくつもあげられますが、大事なことがもう1つ。それは『住宅の劣化を防ぐ、最も抜本的な対策が軽視されている』ことです。
現代の日本の木造住宅は高断熱化・高気密化が進み、建築用断熱材(断熱建材)の使用が欠かせなくなりました。ここ最近の省エネ・創エネトレンドも、この流れに拍車をかけています。
結果として現在、寒冷地向けの壁工法が日本全国で用いられるようになりましたが、この工法ではその構造上、梅雨時に壁内の繊維系断熱材が湿気を吸収し、その湿気が防湿シート等により滞留して「壁内結露」する事が判明しています。
この溜まった水分が、その後の夏場の高温で熱せられ壁内へ放出され「蒸れ腐れ」状態となり木材腐朽菌が大繁殖。その結果、短期で木材が腐朽するという負の連鎖を呼び起こします。
この木材腐朽菌に侵された木材は、強度の低下による耐久・耐震性のリスク増だけで無くシロアリ等の虫害や、カビ等の健康被害までも引き起こしてしまうのです。
本来、木材は長寿命の長期耐久材です。世界最古の木造建築として知られる「奈良県 法隆寺の金色堂」などに見られるように、正しく施工された木材は、気候により湿気を取り入れたり、または吐き出したりして、呼吸をして生きているかのように、数百年の時に耐え続けます。
これから新築、建て替えを検討するなら、木材本来の性能を活かして長期にわたって快適な住宅を実現するために、「適切な断熱建材の選定」と「正しい断熱手法」を活用したい所です。
「壁内結露→木材腐朽→シロアリによる虫害→健康被害、倒壊リスクによる住宅の短命化」と進行する住宅の劣化。
これを最も効率良く防ぐには事後療法よりも、「発生地点から原因を遮断する事」が、最重要となってきます。
断熱材は、内部結露の発生を最小限に抑える素材、つまり断熱建材自体が保水保湿しにくい性質を持っているものを。
そして、その断熱材を施工箇所からズレ落ちたり厚みムラ等が出ないよう、しっかりと正確に施工する事。
それが住宅を長持ちさせる断熱手法の基本です。EPS(ビーズ法発泡ポリスチレン)なら、吸水率が極めて低く経年劣化も少ない上、接着剤で簡単・強固に施工箇所に貼り付けられ、壁内結露の発生を抑える為には、正にうってつけの建材です。
比較的安価な繊維系断熱建材を多用した短命な高断熱・高気密住宅。戦後日本で大量に建てられてきました。
そろそろ「住宅 住まい」を、わずか30年で使い捨てる消費財としてではなく、子や孫の代まで生き続ける財産として、見直してみませんか?