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油化三昌建材 建材トップランナー制に対する取り組み

1 トップランナー制とは

 トップランナー制度とは、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」にもとづく制度で、製造メーカーや輸入事業者に対し、よりエネルギー効率の良い製品販売への移行を求める規制法です。
 しかし、メーカーがどんなにエネルギー効率の良い製品を作ってもそれらの製品は従来品に比べ値段が高くなります。それ故、メーカーの努力だけでは普及することは困難です。一方、性能の劣る従来製品販売を禁止してしまうとメーカーの経営に大きな悪影響を及ぼすことになります。そこで、メーカーや輸入事業者に対し、3~10年先に設定される目標年度と、その間の技術進歩を加味した性能基準(トップランナー基準)を策定し、その達成を求めると共に、表示制度を運用し使用者への材料切り替え意識を喚起することで誘導し、目標年度まで定期的にメーカーからの報告をうけ、国が確認しながら推進してゆく制度です。

2 トップランナー基準とは

 現在の最高性能の製品と目標年度までの技術進歩を加味した性能基準の事ですが、制度の運用により二種類の判断が考えられます。ひとつは最高性能製品の製造販売を求める方法で目標年度までに製品開発を求めると共に達成期限の後、数年遅れて性能の劣る製品の販売を規制するやり方です。これは自動車の排ガス規制において運用されている方法です。この方法の対象製品では○○年度 トップランナー基準適合品と表示される場合が多いようです。
 もう一つの方法は各年度毎に販売された製品の性能値の加重平均をメーカー毎に求め、その平均値が基準値を上回ることを求める制度です。この方法では基準適合品という表示は行われない代わりに、省エネ等級の表示が行われ使用者により性能の高い製品がわかりやすいようにすることが行われます。
 省エネ法のトップランナー制は規制法ですから、関係行政庁は目標達成年に基準を達成しなかった事業者に対し、未達成となった理由や効率改善に向けた今後の対応を報告させ、仮に当該対応によっても効率改善が不十分な場合には、大臣が勧告を行い、さらに本勧告に従わなかった場合には事業者名の公表、命令といった措置が行われます。また、命令に従わなかった場合には100万円以下の罰金に処すこととなっています。

3 建築分野におけるトップランナー制

 建築分野においては平成20 年度に住宅のトップランナー制(住宅事業建築主の判断の基準)が始まったのが最初です。

住宅のトップランナー制の概要

 住宅の建築を業として行う建築主(住宅事業建築主)に対して、その供給する建売戸建住宅の省エネ性能の向上の目標を定め、断熱性能の確保、効率性の高い建築設備の導入等により、一層の省エネ性能の向上を誘導する。

・目標年次(5年後(2013年度)を目標年次として設定)において、目標の達成状況が不十分であるなど、省エネ性能の向上を相当程度行う必要があると認めるときは、国土交通大臣は、当該住宅事業建築主に対し、その目標を示して性能の向上を図るべき旨の勧告、その勧告に従わなかったときは公表、命令(罰則)をもうける。

・目標性能は2007 年に対象者が販売した住宅に標準的な設備が設置する場合のエネルギー使用量の加重平均値と比べて、エネルギー消費量の合計を10%削減する。

建材トップランナー制とは

 従来のトップランナー制がエネルギーを消費する機械器具(自動車・家電・住宅)が対象だったのに対し、平成25 年に改定された制度では、自らエネルギーを消費しなくても、住宅・ビルや他の機器等のエネルギーの消費効率の向上に資する製品を新たにトップランナー制度の対象に追加する事になりました。建築分野では断熱材がこれに当たります。目標性能は各年度毎に販売された製品の性能値の加重平均値で、目標性能を上回ることが製造者・輸入事業者に求められています。
 トップランナー制度の対象となる建築材料(特定熱損失防止建築材料)では、以下に該当する建築材料は除外することとなっています。
① 特殊な用途に使用される建築材料
② 技術的な測定方法、評価方法が確立していない建築材料
③ 市場での使用割合が極度に小さい建築材料

対象から除外される断熱材

①特殊な用途に使用されるもの
○グラスウール断熱材のうち密度24[kg/m3]以上の建築材料
グラスウール断熱材のうち密度24[kg/m3]以上の建築材料は遮音・防火性能が求められる場合に使われる断熱材であることから、「①特殊な用途に使用されるもの」に該当する。

②技術的な測定方法、評価方法が確立していないもの
○吹付け硬質ウレタンフォーム
○ロックウール断熱材及びグラスウール断熱材のうち吹き込み品
吹き付け品、吹き込み品は施工現場によって性能が変わる可能性があり、現段階では出荷時点における建築材料の断熱性能を把握できていないことから、「②技術的な測定方法、評価方法が確立していないもの」に該当する。
将来的に現場の施工に係る測定方法、評価方法が確立された段階で、建材トップランナー制度の対象とすることを再度検討することとする。

③市場での使用割合が極度に小さいもの
○グラスウール断熱材を使用した真空断熱材
超高性能な断熱性能を有する真空断熱材は、現時点では冷蔵庫等の家電用途が中心であり、近年になり実験的に住宅・建築物の断熱用途として発売されてきている。現時点でこの断熱材は、採用実績はほとんどない(シェア0.1%未満)ことから、「③市場での使用割合が極度に小さいもの」に該当する。
○セルロースファイバー、高発泡ポリエチレン、ビーズ法ポリスチレンフォーム及びフェノールフォームこれらの断熱材は、いずれもシェアが数%であることから、「③市場での使用割合が極度に小さいもの」に該当する。

4.対象事業者

 熱損失防止性能の向上に関する勧告及び命令の対象となる事業者(対象事業者)は、年間の生産量又は輸入量が一定以上の者に限定されます。目安はシェアが0.1%未満のグラスウール断熱材、ロックウール断熱材又は押出法ポリスチレンフォーム保温材の製造事業者及び輸入事業者です。しかし、それらの事業者は結果の報告義務対象外となるだけで、熱損失防止性能の表示義務については、出荷量にかかわらず対象となります。

 以上のような検討結果にもとづき、「押出ポリスチレンフォーム」「グラスウール」「ロックウール」の3 種類が建材トップランナーに指定されました。

平成22 年の断熱材出荷量と製造メーカー数

平成22 年の断熱材出荷量と製造メーカー数

5 トップランナー基準 目標基準値

「押出ポリスチレンフォーム」「グラスウール」「ロックウール」において設定された目標基準値は以下になります。対象事業者は平成34 年度(2022 年度)までに目標基準値を達成することを求められています。

トップランナー基準 目標基準値

6 油化三昌建材の取り組み

 油化三昌建材の製造するEPS 断熱材は断熱材出荷シェアーが5%程度であることから規定の③に該当すると判断され、性能にかかわらずトップランナー制度の対象とはなっていません。しかし、油化三昌建材は本制度が目指す目的達成のためには、果たすべき役割があると考え、以下の目標を独自に設定し対応していくこととしました。

目標年度:平成34 年度(2022 年度)
目標性能:EPS 断熱材は断熱性能だけで無く機械的性能により品種が設定される場合が多くあります。そこで全出荷製品の熱伝導率加重平均値では無く各品種毎に高い目標性能を設定し、達成のために努力していくことといたしました。

油化三昌建材の取り組み

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